ボカロ衰退論に関する定量的な評価
はじめに
ボーカロイド衰退論の話題が良く出ますが(kosyuさんの「ニコニコ動画衰退論の記事一覧をまとめたよ」、たちばなさんの「ボカロはなぜ衰退したのか。はたまた衰退してないのか。とか。」)、基準が示されず、印象による議論が繰り返されているように感じます。
もちろん個々人の印象も、現象を理解するのに重要な資料だと思いますが、議論するためには定量的な指標も重要です。そこで、定量的な評価を試みた既往知見をまとめました。
ボカロ衰退論に関する定量的な既往知見
定量的に論じた既往知見では、ニコニコ動画でVOCALOIDタグが付けられた動画のデータ(再生数など)が良く用いられます。YOUTUBEやDIVAなどのゲームに関連した動向は捉えられないものの、ニコニコ動画はVOCALOIDが爆発的な人気を得たプラットフォームであり、一定の共感を得られるデータであり、かつ比較的入手・議論しやすい指標であると思われます。
ASCII.jp:データでみる2013年ボカロ人気キャラ事情|myrmecoleonの「グラフで見るニコニコ動画」
VOCALOIDタグについて、月別の動画投稿数と新規投稿者数の推移を、2007年から2013年にかけて示しています。どちらの数も、全体的に増加傾向です。
また、投稿者が"再生数が伸びずらい"と感じる点について、VOCALOIDカテゴリ自体の年間再生数が増加しているという一見矛盾することを示し、過去の人気動画にも再生数が分散しているのではないか、としています。
日記/2013-10-14/ボカロは衰退している? - ShibaPuki
2010〜2013年について、年間の視聴数、コメント数、マイリス数について、中央値と偏差を示しています。2013年が10月までのデータなので、2012年までの傾向を見ると、視聴数、コメント数、マイリス数の中央値は増加傾向であり、衰退しているとは言えなさそうです。ただし、各値の偏差も増加しており、人気のある動画に再生やコメントが集中しているのかもしれません。
ニコニコ動画のボーカロイド共演ネットワーク
こちらの調査でも、VOCALOIDタグの動画投稿数は増えているよう(〜2012年10月)。詳しく見ると、移動平均と思われる線は、2012年7月から減少に転じているか。こちらのサイトの初音ミク解析というカテゴリの記事では様々な統計解析がされているよう。*1
以上の記事では、概ね全体的には衰退していないと言えると思います。一方で格差は広がっているかも。
月別の値を整理してみた
既往の記事の後ではすごく気がひけるのですが、せっかくなので簡単に整理した結果を載せます。一応、最新データを含めています、という事で…。
使用データ
ありらいおんさんが運営するニコニコ動画のデータ置き場より、各月1日の0時台に取得されたVOCALOIDカテゴリの動画数・再生数・コメント数を利用しました。取得・利用に際して、ありらいおんさんに許可を頂きました。ありがとうございます。過去からのデータを入手できて、本当にありがたいです。
また、VOCALOIDカテゴリが無かった2010年8月以前は音楽カテゴリの推移を参考にして推計しました。*2。
注意点ですが、データ源のニコニコ動画の不調などで上手くデータが取れていない期間があるようです。データが無い期間(2009年6〜10月、2012年9、10月)、前後の期間と比べ動画数・再生数・コメント数が桁違いに大きく、異常と判断し排除した期間(2012年6〜8、11月)と、これは排除していませんが2013年9月は動画数・再生数・コメント数が翌月と完全に一致しております。
まとめ
- カテゴリ全体の動画数・再生数は増加傾向が維持され、その点で衰退していない。
- ただし再生数は動画間の偏りが増加し、また過去の有名動画への再生が増えているだろう点を考えると、新規投稿動画では伸びにくくなっているのではないだろうか。
- コメント数の伸びは次第に減少しているのでは無いだろうか。
大雑把な記事ですが、既往知見と整理した結果から、このような印象を受けました。
(更新履歴)
7/31 データの注意点について文章を変更。